競馬における右周りと左周りはなぜあるの？

競馬のレース場における「右周り」と「左周り」という概念は、競馬の歴史、文化、さらには地理的・政治的要因によって形成されてきました。これらの要素が組み合わさることで、現在の競馬場で見られるような多様な方向性が生まれました。本記事では、競馬のレース場における右周りと左周りの違いや、その歴史的背景、さらには世界各国における周回の違いについて、詳しく探っていきます。

競馬における右周りと左周りとは？

競馬場における「右周り」と「左周り」は、馬がレース中にどの方向に回るかを指します。右周りは時計回りで、馬は右に曲がりながらレースを行います。反対に、左周りは反時計回りで、馬は左に曲がりながら走ります。

この周回方向は、レース場の設計によって決まります。日本の競馬場では、競馬場ごとに右周りと左周りが異なる場合があります。一方、アメリカの競馬場ではほとんどのレースが左周りで行われます。このように、競馬場の周回方向には地域や文化に根ざした特徴があります。

歴史的背景：右周りと左周りの起源

競馬における周回方向の違いは、競馬が誕生した時代や地域ごとの文化的・宗教的背景に由来します。以下に、代表的な事例を挙げてみましょう。

2.1 イギリス：右周りのルーツ

競馬の発祥地の一つであるイギリスでは、伝統的に右周り（時計回り）が主流でした。これは、イギリスの貴族文化や競技の歴史に根ざしています。中世ヨーロッパにおいて、貴族たちは馬術を重要視し、馬に乗る技術を競い合いました。その中で、右手を主に使う武器（剣や槍）を持った騎士たちは、自然と右周りの競技を好んで行うようになりました。

また、競馬場の設計においても、右周りが優先されました。この背景には、当時の建築技術や地形、さらには社会的な慣習が影響していたと考えられます。

2.2 アメリカ：左周りへの移行

一方、アメリカでは18世紀後半から19世紀にかけて競馬が盛んになり、ヨーロッパからの影響を受けつつも独自の発展を遂げました。アメリカの競馬場では、左周りが標準となっています。

この背景には、アメリカ独立戦争後の反英感情が関係していると言われています。イギリスの伝統的な右周りに対抗する形で、新たな国であるアメリカは独自の競馬文化を築こうとし、その象徴として左周りを採用したとする説があります。これにより、アメリカではほとんどの競馬場が左周りのコース設計となり、現在に至っています。

地理的・政治的要因による違い

競馬場の周回方向には、地理的や政治的要因も影響しています。具体的には、競馬場が所在する地域の気候や地形、さらにはその国や地域の政治的背景が、レース場の設計に影響を与えています。

3.1 気候と地形の影響

競馬場が設置される地域の地形や気候は、その設計に大きな影響を与えます。例えば、山岳地帯や斜面が多い地域では、自然の地形に従ってコースが設計されることが多く、結果的に右周りや左周りが選ばれることがあります。

また、気候の影響も無視できません。特に風向きが重要な要素となる競馬において、主に吹く風に対してどちらの方向に回るかは、レースの安全性や馬のパフォーマンスに大きく関わるため、周回方向の選択に影響を与えます。

3.2 政治的背景と文化的影響

政治的背景も、競馬場の周回方向に影響を与えた要因の一つです。前述のアメリカの例のように、ある国や地域が他国と差別化を図るために、意図的に異なる周回方向を採用することがありました。

また、文化的な要因も重要です。競馬はその国の文化や歴史と深く結びついており、宗教的な信念や社会的な価値観が周回方向の選択に影響を与えることがあります。例えば、右手を神聖視する文化では右周りが、左手を優位とする文化では左周りが採用されることが考えられます。

世界の競馬場における周回方向の違い

競馬場の周回方向は国や地域によって異なります。以下では、いくつかの主要な競馬国における周回方向について解説します。

4.1 日本

日本では、競馬場ごとに右周りと左周りが混在しています。例えば、東京競馬場や京都競馬場では左周りが採用されていますが、阪神競馬場や中山競馬場では右周りが主流です。これは、日本が西洋文化を取り入れる際に、イギリスやアメリカの影響を受けつつも独自の競馬文化を築いてきたことに起因しています。

また、日本の競馬場では、地形や周辺環境に合わせてコース設計が行われているため、一部の競馬場では特定の周回方向が適していると判断されてきました。このように、日本の競馬場は多様性を持っており、レースごとに異なる戦略が求められるのが特徴です。

4.2 イギリス

イギリスでは、右周りが伝統的に採用されている競馬場が多く存在します。これは、前述した通り、イギリスの歴史的背景に由来しています。しかし、左周りの競馬場も存在しており、特に地域ごとの競馬文化や伝統に基づいて選ばれています。

4.3 アメリカ

アメリカの競馬場は、ほとんどが左周りで設計されています。これは、アメリカ独自の競馬文化と、イギリスからの独立を象徴するために選ばれたと考えられています。特にケンタッキーダービーなどの大規模な競馬イベントでは、左周りのコースが標準となっています。

4.4 オーストラリア

オーストラリアでも、競馬場の周回方向は地域によって異なります。オーストラリア東部では左周りの競馬場が多い一方で、西部では右周りの競馬場が主流です。これは、オーストラリアがイギリスと深い歴史的なつながりを持ちつつも、地理的な要因や独自の競馬文化を発展させてきた結果と言えます。

まとめ

競馬場における右周りと左周りの違いは、単なるコース設計の違いにとどまらず、その背後には深い歴史的、文化的、そして地理的な背景が存在します。イギリスの伝統的な右周り、アメリカ独立後の左周り、さらには日本やオーストラリアにおける多様な競馬場の設計など、これらの違いは競馬というスポーツが持つ多様性とその魅力を象徴しています。