日本のお札の原版作成に関して、非常に専門的で重要な作業が行われており、そのプロセスは国の経済や信用を支える大切なものであることから、詳細に説明したいと思います。本記事では、「日本のお札の原版を作っているのは誰か」「原版を作成するために必要な資格」「何人がこの作業に関わっているのか」「お札がどのようにして作られているのか」といった点について詳しく掘り下げていきます。
新札が発行されるたびに その精巧な仕上がりに
驚きます
いったいお札ってどのように設計されてつくられているのでしょうか?
日本のお札の原版を作っている人は誰?
日本のお札の原版は、国立印刷局という日本政府が所管する機関で作成されています。国立印刷局は、日本銀行券(つまりお札)や切手、証券などの重要な印刷物を製造している機関で、非常に高い技術力と精密な製造プロセスを持っています。
お札の原版を作る人は「原版彫刻師」や「版画技術者」と呼ばれる専門家で、彼らは極めて高い技術を持った職人です。この技術者たちは、数年にわたる厳しい訓練を受け、手作業で極めて緻密な彫刻を行います。彼らの仕事は、偽造を防ぐための複雑で詳細なデザインを、お札の原版に刻み込むことです。
国立印刷局に所属するこれらの職人たちは、経験と実績を持つ技術者が多く、その中には数十年にわたってこの作業を続けているベテランもいます。また、彼らはデザインや芸術的センスだけでなく、偽造防止技術に関する高度な知識も持ち合わせています。お札は国家の信頼を背負っており、非常に高度なセキュリティ技術が詰め込まれています。
お札の原版を作成するための資格とは?
お札の原版を作成するためには、非常に高度な技術と知識が必要です。基本的には、特定の資格というよりも、国立印刷局での訓練や経験が重視されますが、関連する技能や専門知識を持つことが求められます。
以下のような能力や経験が必要とされています。
1. 精密な彫刻技術
お札の原版は、微細な彫刻によって作成されます。これにより、細かい線や模様が形成され、これが偽造防止の一環となります。このため、手作業での細かい作業に優れていることが必要です。手先の器用さや繊細な感覚が求められるのはもちろん、長時間の集中力も必須です。
2. デザインや美術の知識
お札のデザインには、歴史的な人物や建造物、自然の景観などが描かれることが一般的です。これらを原版に忠実に再現するためには、デザインや美術に関する知識が必要です。特に、陰影の表現や線の使い方など、絵画的な技術も重要です。
3. 偽造防止技術の理解
お札の原版作成においては、偽造を防ぐための技術が非常に重要です。水印やホログラム、微細な文字(マイクロ文字)、光の角度によって変化するインクなど、さまざまな偽造防止要素が取り入れられています。これらの技術を正確に理解し、それを原版作成に反映する能力が求められます。
4. 特定の専門学校や訓練プログラム
国立印刷局では、技術者を育成するための訓練プログラムが用意されています。この訓練プログラムを受けることで、原版作成に必要な技能を身につけることができます。特に、彫刻や版画の技術を学ぶ専門学校を卒業した者が多く採用されます。
何人でお札の原版を作っているのか?
お札の原版作成に直接関わるのは、限られた数の技術者のみです。国立印刷局全体では数千人の従業員が働いていますが、原版作成に従事する「原版彫刻師」や「版画技術者」は、その中でも特に専門的な技術を持った数十人程度と考えられています。
さらに、お札のデザインや原版作成は非常に機密性が高く、関係者以外にはその詳細が知らされません。これは、偽造防止のために厳密に管理されているためです。そのため、作業に関わる人数や具体的なプロセスについての詳細は公開されていない部分が多いのですが、全体の製造工程には数百人規模の技術者やデザイナーが関わっています。
お札はどのようにして作られるのか?
お札の製造過程は非常に複雑で、多くの段階を経て行われます。ここでは、原版作成から最終的なお札の製造に至るまでのプロセスを段階的に説明します。
1. デザインの決定
お札の製造プロセスは、まずデザインの決定から始まります。日本銀行と国立印刷局が共同で、新しいお札のデザインを検討し、必要に応じてデザインの刷新が行われます。デザインには、歴史的な人物や日本の文化を象徴する建造物、風景などが描かれます。
例えば、2024年に発行される予定の新紙幣では、1万円札に渋沢栄一、5千円札に津田梅子、千円札に北里柴三郎がそれぞれ描かれることが決定しています。デザインの決定には、経済的、歴史的な意義が考慮されます。
2. 原版の作成
デザインが決定すると、次に原版彫刻師がそのデザインを基に、原版を作成します。原版は、非常に硬い金属板にデザインを彫り込む作業であり、手作業で慎重に行われます。彫刻には細かい技術が求められ、一枚の原版を完成させるのに数ヶ月を要することもあります。
3. 偽造防止技術の組み込み
原版が完成すると、偽造防止技術が組み込まれます。日本のお札には、さまざまな偽造防止要素が取り入れられています。例えば、以下のような技術が使用されています。
- ホログラム:お札を光にかざすと、角度によって異なる絵柄が見える仕組みです。1万円札にはホログラムが使用されています。
- マイクロ文字:肉眼ではほとんど見えない小さな文字が、特定の部分に印刷されています。これにより、偽造が難しくなっています。
- 特殊インク:光の角度によって色が変わるインクが使用されています。例えば、1000円札の図柄の一部は、このインクによって偽造防止されています。
- 透かし:お札を光にかざすと浮かび上がる絵柄や文字が透かし技術で入れられています。
これらの技術は、原版作成と並行して組み込まれることもあります。
印刷工程
印刷工程は、複数の段階に分けて行われます。
(1) 凹版印刷
最も重要な印刷技術の一つが「凹版印刷」です。お札のデザインを彫刻した金属の版にインクを塗り、それを紙に強い圧力で押し付けることで、インクが紙に染み込むと同時に、表面に独特の凹凸が生じます。これが「立体感」を生み出し、指で触ると触覚で確認できる部分です。
(2) 平版印刷(オフセット印刷)
平版印刷では、背景の模様や文字などを印刷します。非常に細かい線や模様も印刷でき、これもまた偽造防止に役立っています。
(3) 銀行番号・記番号印刷
お札には、それぞれ固有の番号が印刷されています。これが「記番号」と呼ばれるもので、同じ番号のお札は存在しないように管理されています。
(4) ホログラムや特殊加工
一部のお札にはホログラムや色の変わるインクなどが使われており、見る角度によって異なる色や模様が見える仕組みです。これも偽造防止技術の一環です。
検査工程
印刷が完了した後、各お札は非常に厳密な検査を受けます。人間の目による検査だけでなく、機械による自動検査も行われます。寸法、印刷のズレ、記番号の誤りなどがチェックされ、不良品は排除されます。
裁断とパッケージング
検査を通過したお札は、大きなシート状のまま印刷されているため、1枚ずつ裁断されます。裁断後、一定枚数に束ねられ、出荷の準備が行われます。
発行
製造されたお札は日本銀行に送られ、そこから市中に流通することになります。
なるほどです ところで印刷代はいくらなのでしょうか?
原版を作るコストも気になりますね
紙幣の製造コスト 原版を作るための製造費用
日本のお札の製造原価(紙幣の製造コスト)は、額面によって異なりますが、一般的に1枚あたり20円から25円程度とされています。これは、紙幣を印刷するための材料費や労働費、印刷に使用される技術、セキュリティ機能の追加などが含まれたコストです。
一方、原版を作るための製造費用はさらに高額です。原版は非常に精密で、偽造防止のために高度な技術が必要とされるため、具体的な金額は公開されていませんが、数千万円から数億円にのぼるとされています。原版は長期間使用されるため、原版の作成には多大なコストと技術が投入されることになります。
したがって、お札1枚あたりのコストは比較的安価ですが、原版の製作にはかなりの費用がかかっています。
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